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「本質を見失わない/損なわない/忘れない」をスペイン語で何と言うか?

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おはようございます!

スペイン語と日本語の現役プロ通訳、タクミです。

 

今日のテーマは、「本質を見失わない/損なわない/忘れない」、です。

スペイン語で時事を何と表現するかについて、実用例を交えて紹介します。

 

早速、私が見つけた実用例から言います。

 

“sin desvirtuar su esencia”

“sin perder de vista lo esencial”

“sin olvidarse de su esencia/lo esencial”

 

実際の使用例:ネイティブはこう使っている

では、実用例とともに紹介していきます。

まず、“sin desvirtuar su esencia”から。

(例文)

Así surgió la idea de formar un Conjunto de carácter nacional que lograra unir todas las manifestaciones folklóricas a las leyes teatrales (escénicas) sin desvirtuar su verdadera esencia.

Fuente: EcuRed (Cuba), consultado en 24 de marzo, 2018

 

内容はこんな感じです。 

 

(拙訳)

このような流れの中で、キューバにあるすべての伝統舞踊をその本質を損なう(忘れる)ことなく、ショーの要素と融合させることができる全国レベルの舞踊団を設立するというアイディアが生まれた。

出所:EcuRed(キューバ)、2018年3月24日参照

 

日本語訳に困った単語

いざ日本語にしようとすると、

 

・“manifestaciones”

・“leyes”

・“unir”

 

が訳しづらいです。結局、

 

・“manifestaciones” は、上の訳からは消しました。

もし意訳がOKな場面なら「輝き」(“resplandor”)の意味に解釈したいです。

 

・“leyes” は、意訳して「要素」にして、「ショーのルールを取り込む」とはしませんでした。

ここでの “ley” は、“precepto” と同義だと思います。

RAEによる “precepto” の定義は、以下のとおりです。

(RAEの定義)

Cada una de las reglas que se establecen para el manejo de un arte.

Fuente: RAE, consultado en 24 de marzo, 2018

 

・“unir” も日本語に合わせて「融合させる」に調整してます。

 

そのほかの言い換え方

上記の日本語訳のほかにも、

 

・「ショーの要素と組み合わせる」

・「ショーの要素を織り込む/取り込む」

・「ショーの要素をつけ加える/取り入れる」

 

という訳も思いつきました。

ちなみに、

 

・“teatrales” を “escénicas”

・“desvirtuar” を “alterar”

・“esencia” を “naturaleza” や “origen”

 

と言い換えても意味は通じます。

 

補足説明

ここで言う、伝統舞踊団とは、“Conjunto Folklórico Nacional de Cuba”(略称:CFNC)のことを指します。

キューバ最高峰の伝統舞踊を専門とするプロダンサーの集団です。

 

キューバ最高峰の芸術大学である “Instituto Superior de Arte”(略称:ISA)の卒業生がメンバーです。

 

私は、ISAとCFNCで修行したいです。

 

伝統舞踊が構築された世界観をしっかり理解して、キューバ人みたいに踊れるようになりたい。

もちろん踊れたらカッコいいってのもあるけど、歴史や世界観と一体になって忠実にそれを再現できるようになりたい。

 

“sin desvirtuar su esencia” をもう一例

(例文)

Un festival para ver cómo puede evolucionar un plato tan tradicional sin desvirtuar su esencia.

Fuente: El Tiempo (Colombia), 26 de septiembre, 2007

 

 内容はこんな感じです。 

 

(拙訳)

リゾットのような極めて伝統的な料理が、本質を見失わない(本質を損なわない/本質を忘れない)形でどのように進化できるのかを目の当たりに(体感)するためのフェスティバルだ。

出所:2007年9月26日付、El Tiempo(コロンビア)

 

補足説明

10年ほど前に、ボゴタ(コロンビア)で開かれたリゾットをテーマにしたフェスティバルに関する記事です。

 

このレストランの有名なシェフが、「間違ったリゾットの作り方をする奴がいる」というコメントが面白かったので紹介します。

(引用)

"Hay gente que lo intenta en la olla express -dice molesto Daniel Kaplan, el chef de 29 -. El risotto se debe hacer en una olla pequeña de ocho pulgadas y su ciencia radica en que uno esté encima agregándole lentamente el caldo, porque en realidad más que un plato es una técnica de cocción".

Fuente: El Tiempo (Colombia), 26 de septiembre, 2007 

 

 

(拙訳)

リゾットを圧力鍋で作ろうとする人がいる。「29」(というレストラン)のシェフ、ダニエル・カプランは不機嫌に言う。リゾットは、8インチの小なべで作らないとダメだ。鍋のそばを離れず(付きっきりで)、スープをゆっくり加えていくのが、正しいリゾットの作り方だ。リゾットとは単なる料理ではなく、調理技術の結晶だ。

出所:2007年9月26日付、El Tiempo(コロンビア)

 

日本語にしづらい表現

“ciencia” と “más que un plato es una técnica” は、日本語にしづらいな~。

 

“ciencia” は「正しい作り方」としたけど、めっちゃ悩みます。

 

・もともとの「科学」っていう表現も面白いから尊重したい。 

・もっと日本語に寄せた解釈をすると、“ciencia” を「肝」とか「真髄」って訳してしまいたくなる。

・それか、“radica en que” のところを拾って、「リゾット作りの基本は・・・」と訳するか。

 

いろいろ選択肢が湧いてきます。

 

“más que un plato es una técnica” の部分は、調理技術に「結晶」をつけ加えました。

日本語としては、「調理技術」だけでは、何か物足りないと思います。

 

次に、“sin perder de vista lo esencial”

この言い方は、英語での表現を参考にしました。

そこを出発点にスペイン語の実用例を探しました。

 

「本質を見失わない」に該当する英語の表現は次のものです。

 

・Lose sight of the essentials

 

そこから、“sin perder de vista lo esencial (su esencia)” と検索しました。

(例文)

Aunque la obra de Sáenz tiene un componente infantil importante, Gómez explica que su intención es que el espectáculo pueda ser apreciado tanto por chicos como por grandes, por lo que adaptó el texto a una realidad contemporánea, sin perder de vista su esencia. “Tratamos de que toda la familia pueda disfrutar.

Fuente: La Nación, 11 de diciembre, 2011 

 

 

(拙訳)

サエンスの作品は児童向けの要素が強いが、ゴメスは「子どもでも大人でも楽しめる作品であるのがサエンスの意図だ。そのため、本質(良さ)を損なわない形で原作を現代の実情に近づけた。家族みんなで楽しめるように工夫した。」と説明する。

出所:2011年12月11日付、La Nación(アルゼンチン)

 

ご参考

使える文脈が違いますが、役立つ表現なのでついでに紹介します。

 

"Lose track of the nature of the problem"

そこから、“sin perder de vista el origen (la causa raíz) del problema” というスペイン語になります。

 

"Not see the wood for the trees"

そこから、"los árboles no dejan ver (cómo es todo) el bosque" というスペイン語になります。

 

最後に、“sin olvidarse de su esencia/lo esencial”

(例文)

El propio Sergi Arola… recordó que su pretensión "es poner en boga sabores de siempre con un toque propio, pero sin olvidarnos de su esencia".

Fuente: Diario de Ibiza, 11 de junio, 2017 

 

(拙訳)

セルジ・アロラは、「ボガ(という魚)をいつもの自分の味をベースにひと味加える。ただ、本質を忘れることはない。」と述べた。

出所:2017年6月11日付、Diario de Ibiza(スペイン)

 

背景補足

セルジ・アロラは、スペインの料理界の巨匠フェラン・アドリアの弟子です。

エル・ブリやビエール・ガニエールというレストランで修業を積んだミシュランの星つき料理人です。

マスター・シェフという番組のチリ版でも審査員をしていました。

 

結局、「本質」ってどういう意味や

こうやって「本質」とは何かを突き詰めると、自分なりの定義が生まれました。

 

・変わってはならない「何か」の構成要素。

・その構成要素が変わる(失われる)と、その「何か」はそれでなくなる。全く別の「何か」に変わってしまう。

・「何か」がその「何か」であるための絶対条件。

・すべてをそぎ落として最後に残るもの。

・「何か」がその「何か」であるために欠かす事ができない要素。

 

「本質」という言葉をよく使う分野

この記事を書くにあたって、いろいろ実用例をリサーチしました。

「“こうあるべき/こうでなければならない”」という理論やルールが確立された分野でよく使われる表現という印象を受けました。

 

こういうセオリーは、時の流れの中で一つの「型」として形成されます。

そしてその「型」は、「従うべきルール」や「そのルールに従わないとその "何か" ではない」として認識されます。

 

セオリーがあるくらいなので、当然歴史ある分野であり、かつ現代も更なる進化の可能性を探っている分野で使われていますね。

料理、芸術、建築、教育、といった分野での用例をたくさん目にしました。

 

まとめ

この記事があなたの参考になれば幸いです。

 

もっとスペイン語が上手になりたい。

 

キューバに住み込みでダンス修行したい!

 

以上、スペイン語と日本語の現役プロ通訳、タクミでした。