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「全くの作り話/でっち上げだ」をスペイン語で何というか?

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おはようございます!

スペイン語と日本語の現役プロ通訳、タクミです。

 

今日のテーマは、「全くの作り話/でっち上げだ」をスペイン語で何というかです。

4月1日のエイプリルフールと重なったのは、全くの偶然です。

 

今回も実用例を交えつつ紹介します。

早速、私が見つけた表現を紹介します。

 

“es un invento” ← これが普通の表現です。

“es una distorsión del hecho (la realidad)” ← これも普通です。

“es una aberración total” ← ちょっと凝ってます。

“es una posverdad absoluta” ← 使える状況が限定されます。

 

実用例:ネイティブはこう使っている

では、実用例を紹介していきます。

今回は、南米のボリビアとチリの歴史認識にまつわるイザコザに関する記事です。

(例文)

Investigadores chilenos plantean que la presunta acción bélica es una posverdad absoluta”, “un invento” y “una aberración total”.

Fuente: El Mercurio (Chile), 30 de marzo, 2018

 

内容はこんな感じです。 

(拙訳)

チリの研究者たちは、「モラレス大統領が主張する武力衝突での勝利は、“全くの作り話”、“でっち上げ”、“完全な認識違い”」との見解を示している。

出所:2018年3月30日付、El Mercurio(チリ)

 

例文中のモラレス大統領の主張とは、この Twitter 上での発言です。

 

単語の説明

オーソドックスな表現は、“invento”。

とりあえずは、“es un invento” を使いましょう。

確実に通じる表現です。

 

“distorsión” も通じる表現

RAEによる “posverdad” の定義は、

(RAEの定義)

Distorsión deliberada de una realidad, que manipula creencias y emociones con el fin de influir en la opinión pública y en actitudes sociales.

Fuente: RAE, consultado el 31 de marzo, 2018

 

(拙訳)

意図的な事実の歪曲。人々の信条や感情を操作し、世論や社会行動に影響を与えるような歪曲。

出所:RAE、 2018年3月31日参照

 

冒頭で二つ目の表現例として挙げている、“distorsión” は、この “posverdad” の中から引き出したものです。

 

この表現も確実に伝わります。

 

・「事実をねじ曲げた」と言いたい場合には、“distorsión

・「事実を何もないところから作った」と言いたい場合には、"intento" です。

 

以外に深い “posverdad” の世界

それで、この “posverdad” という単語についてです。

 

つい最近RAEの辞書に追加された新しい単語です。

元々は、英語で使われている “post-truth” という単語のスペイン語訳になります。

 

私は、この単語を今日初めて目にしました。

 

字づらと前後の文脈から、「あとで塗りかえられた事実」というふうに理解できました。

そういう意味で、「でっちあげ」と解釈できます。

 

ただ、英語で使われている意味をよく見ると、

 

・何かの事実が本当であるか嘘であるかは重要でない状況。

・客観的な事実よりも、感情や心情に訴える主張の方が世論に影響を与える状況。

 

というような、「事実の歪曲」をより掘り下げた意味が込められています。

「事実より心を揺さぶる主張の方が重要な」と要約できるでしょうか。

 

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どちらかというと時事用語ですね。

使えるシチュエーションと相手は限定されます。

 

それで英語では、下のような組み合わせで使われています。

それに対応するスペイン語を下に書いてます。

・“post-truth politics”

= "la pollítica de la posverdad"

 

・"post-truth world”

= "el mundo de la posverdad"

 

・"post-truth era"

= "la era de la posverdad"/ "tiempos de la posverdad"

 

チリの研究家の面々は、ボリビアのモラレス大統領が、このカンチャス・ブランカスの戦いがあったかどうかという歴史的事実よりも、ボリビアの国民感情に訴えることを念頭に置いた動きをしているという意味で “posverdad” を使ったのだろうと考えられます。

 

“post-truth” は、ここ最近英語での使用頻度が急激に上がった単語です。

イギリスのオックスフォード辞典が、“Word of the Year 2016” 「時代を象徴する言葉」に選ぶほどに。

 

en.oxforddictionaries.com

 

この “post-truth” を象徴する出来事として、次の例が挙げられています。

・イギリスでの国民投票で、EU離脱賛成派が勝った(BREXIT)

・トランプさんがアメリカ大統領に当選した

・コロンビアでの国民投票で和平合意反対派が勝った

出所:2018年1月18日付、teleSUR(ベネズエラ)

 

ちなみに日本語では、「ポスト真実」と訳されています。

全く聞いたことがない単語でしたが、なかなか使う機会はないでしょうね。笑

 

“aberración” の説明

RAEによる “aberración” の定義は、

(RAEの定義)

1. Grave error del entendimiento.

2. Acto o conducta depravados, perversos, o que se apartan de lo aceptado como lícito.

 

Fuente: RAE, consultado el 31 de marzo, 2018

 

例文中の “aberración” は、1の意味で解釈しました。

ただ、1の “grave” には、2で示されている、

 

“acto o conducta depravados, perversos, o que se apartan de lo aceptado como lícito”

 

という「感情」が、"grave" の中に含まれていると感じます。

 

日本語の対訳は、“逸脱” とか “異常” ですかね?

もう日本語の辞書は使わなくなって、今は手元にないので調べようがないです。

 

一定のレベルに達すると日本語の辞書は、「このスペイン語、日本語でなんて訳されてるのかな?」という疑問を解決するためのツールに変わります。

 

背景説明

太平洋戦争ってご存知ですか?

もちろん日本とアメリカの太平洋戦争ではありません。

 

1879年から1884年にかけて、ボリビアとペルーがチリと戦った戦争です。

「硝石戦争」(Guerra del Salitre)とも呼ばれるそうです。

 

この太平洋戦争の中の武力衝突の一つが、“la Batalla de Canchas Blancas” 「カンチャス・ブランカスの戦い」です。

 

(例文からも分かる通り、実際にこの戦いがあったかどうかはわかりませんが、「ポスト真実」の時代では、実際に起こったかどうかはどうでもいいのです。笑)

 

チリがこの戦争に勝ちました。

チリはボリビアに帰属していた太平洋沿いの地方を自国の領土にしました。

この結果、ボリビアは「海への出口」を失いました。

 

この件は、ICJ という領土問題などを審議する裁判所で、ボリビアとチリ、どちらの言い分が通るかが争われているところです。

 

モラレス大統領の動きは、裁判に勝つためのアピールじゃないかとも言われています。

 

他に思いついた単語

ここでは例としては挙げませんでしたが、“tergiversarción” も使えます。

「でっちあげる」を「(事実などを)捻じ曲げる」の意味で捉えると使えますね。

 

“es una tergiversación del hecho”

“es una tergiversación de los hechos”

 

"hecho" を単数にするか複数にするかは、そのときのあなたが、

 

・ただ一つの事実について話しているのか、

・いくつかの連続する事実の集合体について話しているのか、

 

次第です。

 

おそらくこの “tergiversación” は、西和辞典では頻出単語になってないと思います。

けれども、書き言葉やフォーマルな場面での話し言葉では結構耳にする単語です。

 

他にも、

 

・“es un episodio ficticio”

・“es una leyenda”

 

という表現が使われている例もありました。

ぜひ、参考にしてみてください。

 

まとめ

この記事があなたの参考になれば幸いです。

 

もっとスペイン語が上手になりたい。

 

キューバに住み込みでダンス修行がしたい!

 

以上、スペイン語と日本語の現役プロ通訳、タクミでした。