Study Spanish!

スペイン語が上手になりたい人のためのオンラインメディア

「願望と現実を混同する」をスペイン語で何と言う?

f:id:study-spanish:20180510102101j:plain

 

おはようございます!

スペイン語と日本語の現役プロ通訳、タクミです。

 

今日はメキシコ大統領選挙という政治ネタから、日常で役に立つ表現を紹介します。

ビジネスシーンでも使える表現をたくさん出します。

 

Study Spanish

当メディア Study Spanish は、スペイン語が上手になりたい人のために書いています。

「これからスペイン語の表現の幅を広げていきたいと考えている人の役に立てたら」と思っています。

 

スペイン語の文法と基本的な単語をおさえている中級以上の学習者向けです。

なので、細かい文法の説明はしません

 

ある程度のレベルに達している方を想定して書いています。

 

今日のスペイン語

本日の投稿で紹介するスペイン語は、「願望と現実を混同する」です。

あなたなら何と表現しますか?

 

私はネイティブがこう言っているのを見つけました。

 

「願望と現実を混同する」

“confundir los deseos con la realidad”

 

"今日のスペイン語" の選び方

このブログ内で紹介している表現の選定方法は、基本的にこんな感じです。

 

・スペイン語圏のメディアを流し読みする

・面白そうなヘッドラインの記事を読む

・あ~、今スペイン語圏ではこんな事が起きてるんだとインプットをしながら

・日常で使えそうなスペイン語を見つける

・ブログで紹介する

 

という流れで、毎日過ごしてます。

あまり「日本語ありき」で「スペイン語さがし」はしないです。

 

旬の話題に触れる中で得た学びの中から、その一部を世界に発信する感じです。

今日のメキシコ大統領選挙ネタも同じですね。

 

今朝、車で移動している最中に、このニュースが流れてきました。

目的地に着いたあとにググってみたら、目当ての記事がヒットしたという流れです。

 

実際に文章を読んでみて、「この表現、こういう場面での訳に使えるやん」と思ったので、このブログでも紹介することにしました。

 

どんな場面で使える?

で、「今日の表現がどんな場面で使えるか?」についてです。

 

ビジネスシーンで、何かのプロジェクトについてのプレゼンを受けたとき、

・どこまでが事実で

・どこからがプロジェクト担当者の願望か

 

これが判然としないケースってあると思います。

私は、過去にこんなプレゼンをたくさん見てきました。

 

そんな場面で、

・いや、願望と現実をちゃんと区別してよ

・つまり、どこまでが事実で

・どこからがあなた(プロジェクト担当者)の願望か

・その区別がはっきり分かるように話してくれ

 

「こんなコメントを上司ができるといいのにな~」ということを常に思っていました。

 

諭すようなトーンで言えば、決してキツイ響きはしない表現です。

(結局は、どんな表現も話すときのトーンが重要ですね。)

 

ネイティブはこう表現する

今日の例文は、メキシコの全国紙から抜き出してきました。

記事のタイトルは、「“ロペス・オブラドールが大統領選に勝つと将来が心配だ” とバルガス・ジョサが言っている」です。

 

 

くだんの例文はこちら。

(例文)

Vargas Llosa recordó que López Obrador se formó políticamente en el PRI, "es decir en la demagogia, el populismo, la irresponsabilidad, en confundir los deseos con la realidad".

Fuente: El Universal (México), 5 de mayo, 2018

 

(内容/拙訳)

バルガス・ジョサ氏は、ロペス・オブラドール候補が(与党の)PRIで政治的に育成された人物であることに改めて言及し、「(伝統政党である)PRI、つまり、大衆扇動、ポピュリズム、無責任、願望と現実を混同するような環境の中でロペス・オブラドール候補は政治的に育ったのだ。」と述べた。

出所:2018年5月5日付、El Universal(メキシコ)

 

ちょっとだけ説明

日本語とスペイン語の語順がそのまま同じになっている表現です。

 

「AAとBBを混同する」= “confundir AA con BB” です。

この例文では、AA = 願望、BB = 現実です。

 

日本語に訳すときの工夫

あと、日本語に直す過程での工夫について言えば、

 

“en confundir los deseos con la realidad” のところを

= en un entorno donde se confunden los deseos con la realidad”

 

というスペイン語であると解釈して、日本語にしました。

 

こういう文章って、スペイン語をそのまま訳そうとしても、耳障りのいい日本語にならないです。

耳障りのいい日本語に直せるように、「スペイン語をスペイン語で言い換え」しないといけないです。

 

上で私がやっているのが、まさにこの「スペイン語をスペイン語で言い換える」です。

耳障りのいい日本語に直すために、通訳はいろいろな言い換えをやってます。

 

文章で説明するのは難しいですが、「スペイン語の原文では副詞や前置詞であっても、日本語に直したときには動詞や形容詞(述語)にする」

 

こんなアレンジを頭の中でやってます。

 

もちろん、

 

・この文章が本当に伝えたいことは何か?

・その訳で、原文の意図が損なわれないか?

 

についてしっかり考え抜いたうえでのアレンジですが。

 

余談1

「ロペス・オブラドールがPRIで育った」っていうのは初耳でした。

 

メキシコ潜伏歴が長いくせに、メキシコの政治のことよく知りません。

今回の大統領選をきっかけに、少しは勉強したいと思います。

 

余談2

あと、ロペス・オブラドールの略称は、“AMLO”(アムロ)です。

ジジイ版の安室ちゃんです。どうでもいいです。

 

今回で大統領に立候補するのは3回目です。

いつも最有力候補ですが、いつも負けてます。

 

今回は3度目の正直です。

万人受けはしないけど、根強い "アムラー" は結構います。

 

余談3

「夢や願望と現実の境がつかない」は、ラテンアメリカ文学で評価される特徴です。

「夢や願望と現実の境がつかない」とPRIを批判するバルガス・ジョサ自身も「夢と現実の境が分からない」小説をたくさん書いてます。笑

 

「魔術的リアリズム」って聞いたことあります?

(スペイン語だと “realismo mágico” と言います。)

 

この「夢や願望と現実の境がつかない」ことを「魔術的リアリズム」と呼びます。

バルガス・ジョサは、2010年のノーベル文学賞受賞者です。

 

1990年には、母国ペルーの大統領選に立候補しました。

「バルガス・ジョサが間違いなく勝つ」と言われていた選挙でした。

 

しかし、バルガス・ジョサは決選投票で大逆転負けを喫します。

負けた相手は、アルベルト・フジモリです。

 

バルガス・ジョサは、誰も予想しなかった世紀の逆転負けによって、フジモリの引き立て役になってしましました。

この負けによほど腹わたが煮え繰り返ったのか、バルガス・ジョサは90年の選挙以来ずっとフジモリを批判し続けます。

 

フジモリだけじゃなくて、フジモリの娘のケイコまで批判します。

ケイコは、2011年、2016年と2回大統領選に出馬しました。

 

バルガス・ジョサは、2回ともケイコをこき下ろす役に回りました。

2011年の方では、フジモリと同じくらい嫌いなはずのウマラの側につきました。

 

ウマラを嫌っていたのは、ウマラの左派的な思想が嫌だったからです。

でも、左派思想よりフジモリの娘が大統領になる方が嫌だったみたいですね。笑

 

まとめ

この記事があなたの参考になれば幸いです。

 

もっとスペイン語が上手になりたい。

 

キューバに住み込みでダンス修行がしたい!

 

以上、スペイン語と日本語の現役プロ通訳、タクミでした。

 

おまけの時事スペイン語

今までは、"野球のスペイン語" を紹介するときだけでおまけリストはつけてました。

でも、今回は役立つ表現がいっぱいあったのでリストアップしておきます。

 

ワードの出所は、上の例文と同じです。

 

野球ネタと同じで、「おまけ」に一番エネルギーを注いでます。

あくまで「おまけ」のはずなんですが…

 

左派のロペス・オブラドール候補が選挙に勝った場合

un eventual triunfo del izquierdista Manuel López Obrador

注目:将来の可能性を示す場合に “un eventual XX” とよく言います。こういう表現ができると、文章の締りが格段によくなりますね。

 

・メキシコの次期大統領選

las próximas elecciones presidenciales de México

注目:大統領選っていう、1度に1回しか行われない選挙なのに複数形になってることです。これはどんな国でも複数形で書かれてますね。何でか未だに理由が見つからない。

 

・心配になる

da motivos para estar preocupados

注目:「心配する動機を与える」という表現の仕方をしてます。

 

・ロペス・オブラドール政権はメキシコを惨事に追いやる可能性がある。ベネズエラのような破滅にはならないだろうが

su gestión podría empujar a México a un desastre, no a una catástrofe como Venezuela

注目:まず  “gestión” が「政権運営」の意味で使われてます。そして、追いやるは “empujar” になってます。最後に、“desastre” の方が “catástrofe” の方がひどい状態だとバルガス・ジョサが使い分けていることが分かりますね。

 

・バルガス・ジョサは、「キューバ、ベネズエラ、ニカラグア、ボリビアを見てみろ。選挙における無責任がどんな結末を招くか分かる。」とメキシコ国民に呼びかけた。

= el escritor llamó a los mexicanos "a que miren lo que pasa en Cuba, Venezuela, Nicaragua y Bolivia y vean adónde puede conducir la irresponsabilidad electoral

注目:「呼びかける」= “llamar a alguien a que …” となってるところです。そして、“adónde puede conducir XX” で、「XX(行動)がどこに導くことになるか」という表現で、「どんな結末になるか」という概念を伝えています。

 

・メキシコ国民には何がかかっているのかよく考えるための余地がある

= Todavía hay espacio para que los mexicanos sopesen lo que está en juego

注目:RAEの定義によると “sopesar” = “examinar con atención el pro y el contra de un asunto” となっています。“lo que está en juego” は、英語で言う “what is at stake” です。

 

関連記事:神ツールRAE 

study-spanish.hatenablog.com

 

・メキシコのような偉大な国が、大衆扇動者のポピュリストを大統領に選んで自滅しないことを祈る

ojalá ese gran país no se suicide eligiendo a un demagogo y populista irresponsable

注:まず、“ojalá” が目につきます。次に、「首を絞める」くらいの意味で、“suicidarse” 「自殺する」が使われてます。

 

・バルガス・ジョサは、ロペス・オブラドールのような候補がリードしている状況が打生じた責任の大半は、アメリカのトランプ大統領にあると述べた

El literato achacó al presidente estadounidense, Donald Trump, una buena parte de la responsabilidad de que López Obrador asome como el candidato favorito

注目:同じ単語の繰り返しをしないために、バルガス・ジョサを「文学者」と言い換えてます。で、「責任の大半」というときに “una buena parte de la responsabilidad” は、よく聞く言い方です。“asome como el candidato favorito” は、「世論調査をリードしている」という意味です。

 

・メキシコ人を攻撃し侮辱することで、トランプはロペス・オブラドールに味方した

= Con sus ataques e insultos a los mexicanos, Trump ha favorecido a López Obrador

 

・キューバの反体制派

= la disidente cubana Rosa María Payá

注目:“disidente” は、ある政党にいて途中で考え方が合わずに党を出る人のことを言います。

 

・ベネズエラの野党のメンバー

= los opositores venezolanos

 

・フォーラム前に行われたインタビューでレデスマが示した点に同意した

= coincidió con lo señalado por Ledezma en una entrevista previa al foro

 

・麻薬独裁政権は選挙では終わらない

la narcotiranía no sale con votos…

 

・ベネズエラは今ラテンアメリカ全体の歴史でも例を見ない独裁政治、想像しがたい恐怖を生きている

= Venezuela vive una tiranía única en la historia latinoamericana, vive un horror que pocos imaginan

 

・飢餓、人道危機、薬も食糧もない

= vive una hambruna, crisis humanitaria, no hay medicinas ni comida

 

・政府は治安の維持も保護の保護もしない

el Estado no aporta seguridad ni protección

 

・完全に歪められた選挙

= las elecciones están totalmente amañadas

注目:RAEによると “preparar o disponer algo con engaño o artificio” と言ってます。

 

・会場からの質問に対して

ante una pregunta del público

注:暗記すべき表現です。

 

・ベネズエラでの軍事的な解決というアイディアには後ろ向きな考えを示した

se manifestó reticente a la idea de una salida militar en Venezuela

注目:“se manifestó reticente” が、「後ろ向きな姿勢を示した」に該当します。“manifestarse 形容詞” という組み合わせで、「~な姿勢を示した」という意味になります。書き言葉ではよく目にする表現です。

 

・外国による介入が正当化されるのは、極端なケースだけだ。

= sólo en casos extremos una intervención exterior podría justificarse

注:ここは「ベネズエラへの外国の介入」という仮定の話をしているので、“podría” という時制になってます。この仮定の文脈での動詞の時制のチョイスは、非ネイティブには難しいです。いざ話してみるとこの場面でも “puede” (現在の時制)を使ってしまうかもしれない。

 

・ベタンクール元大統領の構想を復活させる

resucitar una idea del expresidente venezolano Rómulo Betancourt

 

・地方レベルの連合を作り、独裁政権を囲い込んで孤立させ、生き残りの道を消す

=crear una coordinación regional para cercar a las dictaduras y cerrarles las vías de supervivencia, aislándolas

 

・軍事的な介入よりも効果のある、独裁政権の息の根を止めるやり方

= una manera más efectiva para asfixiar a las dictaduras que una intervención militar

 

・フォーラムの開会の辞

un saludo al inaugurar el encuentro

 

・ベネズエラのように強権的に成り果てるポピュリスト政権には、断固として立ち向かわねばならない

los regímenes populistas que devienen en autoritarios, como en Venezuela, hay que enfrentarlos con nuestras convicciones

注目:“devenir” がこの文章だと “llegan a convertirse en (regímenes) autoritarios” という意味になります。この “devenir” は意味が理解しづらいワードの1つです。

 

・自由選挙、秘密投票、制限のない選挙を訴え

= demandas de "elecciones libres, voto secreto y sin restricciones

 

・キロガ元大統領は自分の発言機会で宣言した

= Quiroga declaró en su intervención

 

・いつも自由が勝つ、独裁者はいつも凋落する

= "la libertad siempre prevalece, los tiranos siempre terminan"

 

・ボリビアに根付いたポピュリズムは後退しつつある

= el populismo bolivariano asentado en su país está retrocediendo

 

・まだまだ戦いが残っている

aún hay batallas por librar

 

・ボリビアはベネズエラ麻薬独裁政権に服従している

= Bolivia está supeditado a la narcotiranía venezolana

 

・法の支配を強化する

fortalecer el Estado de derecho

 

・救世主思想、ポピュリズムに囚われる

presas del mesianismo y el populismo

 

・三権分立を保障できない

= incapaces de garantizar la independencia de poderes

 

・強権的なリーダーを排除しても、救世主的でポピュリストのような別のリーダーが後を埋めるだけでは何の役にも立たない

De nada sirve deshacerse de líderes autoritarios para que lleguen otros, mesiánicos y populistas

注目:“de nada sirve XX” が「何の役にも立たない」です。“mesiánicos” が「救世主的な」に当たります。今までと同じ政治家に飽き飽きしていて、「誰か既存の政治をぶっ潰すような政治家が現れないかな」という心情の有権者が求める政治家をこう表現します。

 

・政財界のエリートはポピュリズムに介入の余地を与えた。民主主義より独裁を後押ししてきた。

las élites políticas y económicas han abierto las puertas al populismo y han favorecido a las dictaduras sobre las democracias

注目:「政財界のエリート」が “las élites políticas y económicas” に当たります。「介入の余地を与えた」という訳は即興です。「ポピュリズムにドアを開けた」と表現してます。で、“favorecer a XX sobre YY” のところで、前置詞が “sobre” になってるところが注意ですね。 こういう用例の “sobre” はよく見ます。でも、見慣れてないと使えないですね。

 

・知識層、インテリ層

= las élites intelectuales

注目:“los intelectuales” でも通じます。

 

最後まで読んでもらえてうれしいです。