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日本、ベルギー相手に散る

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さかのぼること、8時間前。

オレは田舎の道路沿いをトボトボ歩いていた。

 

 

涙をこらえながら。

胸が締め付けられる感覚に吐き気を感じながら。

 

この感覚は何なんだ、一体?

夢でも見ているような気分だ。

 

胸を包む大きな悲しみ

2018年7月2日、今日は我が母の誕生日。

記念すべき日のはずだ。

 

喜ぶべき記念日のはずだ。

でも、全くうれしくない。

 

大きな悲しみにオレは打ちひしがれている。

サッカー日本代表が、ベルギーに負けたからだ。

 

 

すべてを見届ける準備ができていた

今日、オレは会社を急遽、早退した。

8年前の南アフリカ大会と同じ後悔をしたくなかったからだ。

 

8年前は、決勝TでパラグアイにPK で負けた。

この試合をオレは生で見る最大限の努力をしなかった。

 

すごく後悔した。

負けるにしても、その負けをこの目で見届けたかった。

 

しかし、それが出来なかった。

8年後の今日、もう同じ後悔しないためにオレは動いた。

 

午前中で業務を切り上げた。

近くのバーに行って、テレビに釘付けになった。

 

ガマンの前半とかすかな期待

前半、最初の20、30分ほどは、ガマンの時間だった。

ベルギーに、相当押し込まれた。

 

それでも、ベルギーのペースが落ちて来た。

そこで、日本も得点の可能性を感じさせる流れが生まれてきた。

 

前半は、0-0 で終了した。

後半勝負だ。

 

まさかの先制

そして後半。

ボールロストやミスパスが多く、あまり良くなかった柴崎が原口にスルーパスを通す。

 

これを原口が、決めてしまった。

原口が決めたこともうれしかった。

 

外人しかいないバーで、一人大声で叫んでガッツポーズしてしまった。

文字通り、「人目をはばかることなく」。

 

 

これオレは思った。

「2点目を取りに行け」。

 

ベルギーのエデン・アザールに、ポスト直撃のシュートをくらった。

アザールが思ったより足の先っちょに当たってくれたから、運良く外れた。

 

「ヤバイかな」と思った。

「期待しない方がいいかな」と思った。

 

まさかの 2-0

でもここで、あの男がやってくれた。

その男とは、「乾」だ。

 

「今大会を代表するミドルシュート」

 

 

そんな高い評価を受けるスーパーゴールを遅咲きの男が決めた。

で、2-0 になった。

 

ワールドカップ初のベスト8進出。

信じられないが、うれしい気持ちになってきた。

 

しかも、日本の選手はゴールによって、より躍動している。

2-0 になってすぐの前線からのプレスを見るとそんな風に感じた。

 

過去の亡霊

このとき、俺の頭によぎったのはあの試合だった。

2013年、ブラジルワールドカップ前のコンフェデレーションズカップ、イタリア戦だ。

 

 

前半、2-0 でリードした。

でも、結果は 4-3 で負け。

 

2-0 は日本代表にとっては安全なリードではない。

そんな内なる声が聞こえてきた。

 

 

実際、3-0 にできる雰囲気は大いに感じられた。

ベルギーのディフェンスが、そんなにスゴイという風にも感じられなかった。

 

2-0 なのだから、ボールを持って、チャンスがあれば3点目を狙いに行く。

それでもいいのではとも考えた。

 

次で勝てなくてもいい。

この試合に勝って、ベスト8という成績を残してくれたら。

 

そんなふうに思った。

この試合で全部出していいから、勝ってくれ。

 

そう願っていた。

でも、そんなに簡単じゃない。

 

この時点で、ロスタイムを含めると35分ぐらい残っていた。

日本が35分間引いて守るだけでスコアを維持できると思えなかった。

 

ここで先にベルギーが動いた。

選手交代だ。

 

嫌な予感

この前後から、ベルギーのパスが繋がり始めた。

嫌な予感がした。

 

ベルギーの1点目。

何でこれが入るのか、教えて欲しい。

 

 

川島を責めずにはいられない。

メキシコのオチョアが日本に欲しい。

 

 

ベルギーの2点目。

何とも既視感のあるゴールだった。

 

 

ベルギーの3点目。

もうみんな知ってるだろう。

 

 

 

本田のコーナーキックキーパーにキャッチされた。

ボールをキャッチしたキーパーから、カウンターが開始された。

 

ベルギーのボールが、日本のゴールに突き刺さったとき。

思わず、目を覆った、頭を抱えた。

 

でも、今日の調子なら一発のチャンスだけで同点にできる可能性がある。

そんなふうな希望が湧いてきた。

 

でも、日本がキックオフしてすぐ。

試合終了を告げるホイッスルが鳴った…

 

・負けは想定どおりのはず。なのに…

・何なんだ、この胸の奥を締め付ける圧力は?

・何で、涙が出そうになるんだ?

 

全く理解できない。

なんでこんな感情になるのか?

 

・「自分たちの持っているものは全部出し切った?」

・「悔いがない?」

 

んなわけないだろう。

オレは悔しくて仕方ない。

 

・「いい試合した」

・「追い詰めた」

・「あの 強豪 〇〇 を本気にさせた」

・「あともう一歩及ばなかった」

 

もう聞き飽きたぜ、そんなコメント。

勝てよ。

 

 

勝ってくれよ。

結果が欲しい。

 

 

 

結果が出てから、「質」でいいから。

まずは、結果が欲しい。

 

 

(例文)

Fue tan cruel la despedida de Japón como bello el éxito de Bélgica. Porque tanto uno como otro merecieron el pase a octavos tras protagonizar un encuentro plagado de alternativas en el que los nipones se vieron con el triunfo en la mano hasta que despertó el talento belga. Un gol en el tiempo añadido evitó la prórroga y sepultó el sueño japonés justo cuando los asiáticos buscaban la victoria con más ahínco.

Fuente: ABC (España), 2 de julio de 2018 

 

(内容)

日本の敗退が非常に残酷であるのと同じくらい、ベルギーの勝利も美しかった両者とも勝利にふさわしかった。どう転んでもおかしくない試合だった。日本はベルギーの才能が目覚めるまで、勝利を手中に収めていた。ロスタイムのゴールが延長戦前に決着をつけ、日本の夢を打ち砕いた日本がより貪欲に勝利を手繰りよせようとしている、まさにそのときだった。

出所:2018年7月2日付、ABC(スペイン)

 

「日本の敗退が非常に残酷であるのと同じくらい、ベルギーの勝利も美しかった。」

勝者と敗者をコントラストさせるうまい表現だ。

でも、この失望の前では、こんなにうまい表現さえ色あせて見える。

 

「両者とも勝利にふさわしかった。」

そんなこと言われても、負けは負けだ。

そう思ってしまう。

 

・原口が難しいシュートを決めた。

・乾がスーパーミドルをブチ込んだ。

 

意味ないぜ、全く。

勝ってない。

 

負けたんだぜ。

オレら。

 

「勝利を手中に収めていた。」

まさにその通り。

むしろ、最初からボコられてた方がマシだったと思ってしまう。

 

「日本の夢を打ち砕いた。」

「日本がより貪欲に勝利を手繰りよせようとしている、まさにそのときだった。」

いつもなら、ウキウキしてメモするような表現。

まったく、気持ちが踊らないぜ。

 

 

(例文)

...Japón, una selección que estaba enamorando en Rusia y que rozó con la yema de los dedos los primeros cuartos de final de su historia.

Fuente: La Vanguardia (México), 3 de julio de 2018

 

(内容)

ロシアから世界を虜にしつつあった日本代表初めてのベスト8進出をその手に一度は収めた

出所:2018年7月3日付、La Vanguardia(メキシコ)

 

「世界を虜にしつつあった日本代表」

「初めてのベスト8進出をその手に一度は収めた」

エモい表現のはずなのに...

いい感じの表現のはずなのに...

 

全く耳にも入ってこないし、心にも響かない。

何をする気にもなれない。

 

「良く頑張った」

 

そんな言葉でこの気持ちを整理できない自分がいる。

でも、正直な気持ちなんだ。

 

前なんて向けない。

どうしたらいいんだ?

 

 

今まで聴いたこともない失恋ソングに惹かれてしまった。

どうかしてるわ。

 

 

スペイン語と日本語のプロ通訳、タクミ。

2018年7月2日、失望の最中、X 国より。