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「お互いの関係を良くするためになる」をスペイン語で何と言う?

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おはようございます。

スペイン語と日本語の現役プロ通訳、タクミです。

 

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この投稿では、Netflixのドラマで出会った男女関係にまつわる表現を紹介します。

 

今日のスペイン語

今日は「お互いの関係を良くするためになる」の表現方法を紹介します。

私が出会った言い回しはこれでした。

 

「お互いの関係を良くするためになる」

“nos va ayudar a que seamos una mejor versión de nosotros mismos”

 

直訳するのは難しい文章です。

ただスペイン語で何を言っているかは感覚的に分かると思うので、例文を見てこの表現が使える場面を感じ取っていただければと思います。

 

今日の表現のポイントは、

 

・この文脈

・この意味で

・“versión” という単語をチョイスしている

 

ところです。

 

今日の例文の出所

今日の例文は、Netflixオリジナルドラマに出てくる会話からの抜粋です。

そのドラマとは、“Club de Cuervos” というメキシコのサッカークラブの運営を題材にしたコメディーです。

 

 

今回の例文の出所になったドラマは、この “Club de Cuervos” からのスピンオフ作品という位置づけです。

ただ、第1話の15分だけを見たところでは、スピンオフ作品ではなく続編(シーズン4)ですね(笑)

 

 

このエピソードでは、主人公たちが運営するサッカーチームが、ニカラグアで行われる大会に賞金目当てで参加するというストーリーです。

 

監督はじめ、家族がいる選手たちは大会出場のために、急遽1ヵ月間の出張ということになりました。

それで、空港まで見送りに来た監督の奥さんが監督にダダをこねている場面でのやりとりです。

 

ネイティブはこう表現する

では、クエルボスの監督と監督の奥さんのやりとりを見てください。

 

(例文)

Mujer del entrenador

No puedo creer que nos hiciste mudar a pinche Nuevo Toledo para darle otra oportunidad a nuestro matrimonio, y ahora me dices que te vas un mes.

 

(内容)

監督の奥さん

信じられない。私たちをヌエボ・トレドまで来させておいて。ここでもう一度結婚生活をやり直すって言うことだったでしょ。なのに1ヵ月出張するなんて。

注:このドラマのサッカーチーム、クエルボスの本拠地がヌエボ・トレドという街。監督は、クエルボスの監督就任に伴って、奥さんと息子をヌエボ・トレドに引っ越させていた(これは過去の3シーズンで全く出てこなかった話です)。

 

Entrenador

Es trabajo. Así tenemos un pan en la mesa, un techo... y las llaves del Mercedes. 

 

監督

仕事だから仕方ないよ。仕事があるから食事ができて、家があって、メルセデスになって乗れる。

 

Mujer del entrenador

Pero me dijiste que no nos íbamos a separar tanto tiempo. No conocemos a nadie. 

 

監督の奥さん

でもそんなに長いあいだ離れ離れになるなんて言ってなかったじゃない。この街には知り合いもいないし。

 

Entrenador

Mi amor, por favor. Esto nos va a mejorar la pareja, vas a ver. Esto nos va ayudar a que seamos una mejor versión de nosotros mismos. Levántame la carita, por favor, que me angustias y no puedo viajar.

 

監督

愛しい君よ、わかってくれ。これは僕たち2人にとっては良いことなんだ。きっと君にもわかるよ。僕たちがより良い関係を築くためになるんだ。だから顔を上げて。そんな顔されたら不安になって出張に行けないよ。

 

Fuente: “La balada de Hugo Sánchez”, Episodio 1 de la Temporada 1: “ponte bloqueador”, por Netflix, visto el 15 de julio de 2018

 

出所: “La balada de Hugo Sánchez”,シーズン1、エピソード1:“ponte bloqueador”、2018年7月15日Netflixで視聴

 

ネイティブの発想

冒頭でも、今日の表現のポイントは、“versión” と言う単語のチョイスだと言いました。

"versión" の意味は「バージョン」です。

 

例文全体で見ると、「僕たち自身がもっと良いバージョンをになることを助けてくれる」という直訳になります。

かなりぎこちない日本語ではありますが、夫婦の関係という文脈に照らし合わせれば、“versión” で出そうとしているニュアンスは十分感じられると思います。

 

メキシコの結婚事情

監督と監督の奥さんのやり取りを見て何か感じられませんでしたか?

 

・「監督の奥さん、めんどくせえ」

・「監督の反応が仏様か?」

 

って思いませんでした?

 

私はこれを見たとき、「あー、メキシコの夫婦の典型だな」と思いました。

注:監督はアルゼンチン人ですが、奥さんはメキシコ人の設定です。奥さん役の女優は、本当はコロンビア人。

 

では、場面ごとに分けて説明します。

 

監督の奥さんの言葉1

信じられない。私たちをヌエボ・トレドになんて引っ越させておいて。ここでもう一度結婚生活をやり直すっていうことだったでしょ。なのに1か月出張するなんて。

 

「ヌエボ・トレドなんかに引っ越させておいて」

・まず、メキシコの女性の方は引っ越しが嫌い。特に結婚すると、できれば自分が生まれ育った場所(家族が住んでいる街)に家を買って、そこで一生暮らしたいと考えている。定住を好む傾向が極めて強い。仕事の都合で転勤とか、まー、良い顔はしないです。それが仕事であっても。そもそもメキシコには、転勤が当たり前の文化がない。それで、「ヌエボ・トレドなんかに引っ越させておいて」という言葉が出るのです。

 

「結婚生活をやり直す」

・次に、「結婚生活をやり直す」と出てきます。日本のように、ある夫婦が、男女としては終わっていても、とりあえず共同生活だけは維持しているというケースは、メキシコでは成立しないです。それで、メキシコの女性はいろいろ旦那に対する要求が多いです。このためかなりぶつかることが多い。傍から見たらうまくいってるような夫婦でも、家の中では全然うまくいってないというのはよく見聞きします。離婚も多いですね。離婚が多い一方で、「離婚=人生の汚点」という観念も不思議と強くて、うまく行かないのがわかってるくせに、なんども夫婦関係を修復しようとする傾向があります。特に、子供がいる夫婦の場合。 そういう背景が、「ここでもう一度結婚生活をやり直すっていうことだったでしょ」という奥さんの言葉につながります。

 

「1か月出張するなんて」

・そして、「1か月出張するなんて」。メキシコ人の女性はダンナの出張も嫌いですね。半沢直樹の奥さんのように、「仕事がんばってこい」とか「うちのことは任せとけ」とかは言わないです。

 

監督の奥さんの言葉2

でもそんなに長いあいだ離れ離れになるなんて言ってなかったじゃない。この街には知り合いもいないし。

 

「長いあいだ離れ離れになるなんて言ってなかった」

・これは、メキシコ人女性と付き合ったことがある日本人男子たちが、こぞってウザがる発言ですね。「急に決まったんだから仕方ねえだろ!しかも仕事だ」と、みんな嘆いています。私の聞き取り調査によると、当の女性たちは、そんなに深く考えて言っているわけでも、そんなに字面ほど深刻に考えているのではないようです。「ラテン女性が(生まれつき)ちょっと大げさに表現するのを、日本男児たちは額面通りに受け取り過ぎる」という文化的なミスマッチが起きているようです。

 

「この街には知り合いもいないし」

・これも、「メキシコらしいな〜」と思います。上で話したように、メキシコには基本、引っ越しの文化がないし、主な人間関係は家族中心です。だから、親戚も誰もいない街に行って、友達関係を築くという習慣がありません。で、知らない土地に一人で行って、一人で楽しむという生き方もメキシコ人にはできない。社交性の中で生きる人たちです。

 

監督の言葉1

仕事だから仕方ないよ。仕事があるから食事ができて、家があって、メルセデスにだって乗れる。

 

「仕事だから仕方ない」

・「家族が一番大事」なラティーノでも、「仕事だから仕方ない」と言うときもある、ということが分かると思います。ただ、「仕事だから仕方ない」だけぶっきらぼうに言っても、メキシコ人女性には通じません。

 

・で、その「仕方なくやる仕事の言い訳」をどこに求めるか?それはやはり「家族の生活のため」です。だから、「食事、家」がまず出てきます。「メルセデス」は「多少はぜいたくもできているでしょ?」という監督なりのユーモアです。

 

監督の言葉2

愛しい君よ、わかってくれ。これは僕たち2人にとっては良いことなんだ。きっと君にもわかるよ。僕たち自身がより良い関係を築くためにもプラスに働くよ。だから顔を上げて。そんな顔されたら不安になって出張に行けないよ。

 

・日本人の男子諸君、メキシコ人女性に長期出張でゴネられたらときの正しい対処方法がここにある。この監督の言葉を竹取物語の冒頭のように暗唱するように。「仕事だから仕方ないだろ!」と感情的になるのをグッとこらえて、監督から人工的に授けられたこの「型」を反射的に繰り出そう。できるなら、実際の監督のジェスチャーや話すときのトーンまでコピーできると最高だ。

 

まとめ

この記事があなたの参考になればうれしいです。

 

もっとスペイン語が上手になりたい。

 

キューバに住み込みでダンス修行がしたい。

 

以上、スペイン語と日本語の現役プロ通訳、タクミでした。

 

これからYouTubeでキューバのルンバ(コルンビア)を見てから寝ます。

いい夢見られること間違いなし。

 

一、コルンビア

二、グアグアンコー

三、ジャンブー

四、オリーチャ

五、ポプラール

 

タクミ