「チリのスペイン語は最悪」論に対するオレの考え→ たしかに聞き取りづらい
おはようございます!
スペイン語と日本語の現役プロ通訳、タクミです。
スペイン語が上手になりたい人のための仲間、Study Spanish。
今日はスペイン語にまつわるよもやま話を取り上げます。
テーマは「チリのスペイン語は最悪だ」という意見についてです。
たまたまこの記事を読んで、私が感じていることを書いてみようと思いました。
チリのスペイン語は最悪って本当?
— study-spanish (@studyspanishjp) 2018年9月9日
→ 完全に納得。
→ 仲がいい友達で普段は言ってることが分かるのに、ネイティブ同士で本気出してしゃべり出すと何を言ってるか全く分からん。
これは、チリ人と絡んだ事がある人なら分かるはず。https://t.co/iYTsoNNV1u #EXPAT #COURRiER_JAPON
この記事の筆者(川上さん)の意見に、私の意見を書いていく形で進めます。
勝手に対話形式にさせてもらいます。
一問一答
やりとり1
川上さん→
初めてエクアドルへ行って、スペイン語を聞いたとき、なんて美しい言葉の響きなんだろうと思った
タクミ→
エクアドルのスペイン語がキレイだとは感じない。
スペイン語の留学サイトに「エクアドルのスペイン語は最もキレイ」とか書いてある。
このような「この国のスペイン語の発音が一番キレイ!」という賞賛には、「一体、誰がなんの根拠があって言ったんや?」とオレは常に気になります。
あとでも言いますが、オレの意見としては、
・「この国のスペイン語の発音が一番キレイ」とか言うのはない
・「この国のスペイン語は聞き取りやすい」はある
・「でも、聞き取りやすいとキレイ」はまた別の話
・たとえば、「メキシコのスペイン語は聞き取りやすいけどキレイ」とは思えない
やりとり2
川上さん→
スペイン語は日本語と同じように母音を多く使うので発音は難しくない
オレの意見→
ネイティブと同じように聞こえるスペイン語の発音は日本人にはむずかしいです。
ネイティブと見まごうように発音できる純粋な日本人ってなかなかいないです。
study-spanish.hatenablog.com
やりとり3
川上さん→
書いてあるものもローマ字読みすればだいたい読めるので、日本人にとっては親しみの持てる言葉
オレの意見→
こっちの「だいたい読める」には賛成です。
そこまで、「エッ?何いまの?」と日本人が感じるような発音はない。
やりとり4
川上さん→
チリへやってきたわけですが、ん??なんか違う。響きが美しくない……早口で何をいっているのか全然わからない……??
オレの意見→
たしかに、チリ人には独特できわだつ発音の特徴があります。
今では、アルゼンチンと同じくらい一発でチリ人だとわかります。
そのくらいチリ人は発音になまりがあります。
(私の大学の卒論テーマは「チリのスペイン語の特徴」でした。)
チリの面白いところは、ふだんのチリ発音がフォーマルな場にも引きずられるところです(アルゼンチンなど、他の国もそれぞれ引きずってます)。
ただ、フォーマルと日常で、発音が大きくちがう国ってあるんですよね。
メキシコとペルーはフォーマルな場では話し方が変わる国だと感じます。
やりとり4
川上さん→
チリ人たちは「チリのスペイン語は最悪だからね」と言います。
チリ人(オレ)の意見→
チリ人が自分たちのしゃべりが最悪だという事を自覚しているのは、何年か前にyoutubeで観たことがあったので知っていました。
ひさびさにyoutubeで検索してみたら、山ほど動画がヒットしました。
「チリ人のスペイン語は最悪」論は、もはやチリ人の代表的な自虐ネタです。
なんかチリのスペイン語の文章を読み上げています。
でも、ほとんど聞き取れないし、意味が分からないです。
下の動画の頭の方では、紙に単語と意味を書いている場面がながれます。
まさにこれが、ひとつで複数の意味をかねる単語が多いの具体例です。
下の動画ではエクアドル人の男性(長髪チリ毛)がチリ人にインタビューしています。エクアドルの彼のスペイン語が断然聞き取りやすい。
この動画は、なんでチリ人の話し方は分かりづらいのか?
この疑問に答えています(01:20〜01:49)
この研究者のオジさん曰く、チリ人のスペイン語が分かりづらい理由は2つあります。(私の見解も交えて書いています)
- 普段つかう語彙の数が少ない
→ これが、ひとつの単語で複数の意味をカバーすることにつながる
→ 単語の意味が「文脈次第」になるので、慣れていない人間には意味が取りづらい
→ 手がかりとなる文脈の説明にも、チリだけの単語、発音の省略があって分かりづらい→ 文脈が理解できず、複数の意味がある単語だけポンと渡される形になる
→ それだけだと意味がわからない
- 発音を省略する
→ 語尾の “s” の発音を省略するレベルじゃない
→ 単語の半分(4音節あったら最初の2音節だけ)しか発音しないとかいうレベル
やりとり5
川上さん→
私の彼(スペイン人)はチリのラジオを聴いていると、「そんな名詞は存在しない!勝手に言葉を作るな」とか「なんでそんな言い方になるんだ!この耳障りなラジオを消してくれ!」と怒り出すのです。
オレの意見→
あと100年もしたら、今の時代に存在しない名詞や言葉もたくさんあるよ、きっと。
言葉なんて時の流れとともに変わっていくものだから、ゆるく構えていいと思う。
私、いま12世紀頃に書かれたスペイン語の古典を読んでいます。
オレの意見→
これを読むとスペイン語もめちゃくちゃ変化していることが分かります。
読むのが苦痛なくらい変わるんだから、そこまで厳しくしなくてもいいと思う。
とはいいつつオレも矛盾してるんだけど、「この言い方はネエだろ」とネイティブに文句を言う事があります 笑
スペイン対ラテンアメリカだけじゃなくて、ラテンアメリカの中でも「そんな単語ない!」と、ほかの国のスペイン語にケチをする例はよくあります。
そもそも、スペインとラテンアメリカって別の大陸にあります。
そりゃ、ちがって当然ですよ。
スペインとラテンアメリカを比較するのは、私的にはイマイチだと思います。
面白いのは面白いですが、あって当然の違いに一喜一憂している感じがします。
やりとり6
川上さん→
スペインへ行ったとき、周囲の人たちの言っていることがよくわかって、急にスペイン語が上手になったような気がしました。
オレの意見→
これはわかりますね。
国が変わると理解できる度合いもかなり変わる。
やりとり7
川上さん→
ペルーやボリビアへ行ったときも、人々はゆっくりと丁寧に話す印象を持ちました。
オレの意見→
ペルー、ゆっくりかな?(私、ペルーに2年潜伏していた事があります)チリよりはゆっくりな気がするけど、ペルーも結構早い気がする。
ペルー人たちが、「自分たちは早口だ」と言ってるのを聞いた事があります。
まあ、そんなにガチで話す友達とかいなかったから、計測するチャンスがなかった 笑
ボリビアは印象があんまりない。2週間くらい旅行で行っただけで、かつずっと高山病だったから理解度が落ちてた。
やりとり8
川上さん→
チリのスペイン語が最悪と言われる意味がだんだん分かってきた...
オレの意見→
そう。「チリのスペイン語が最悪」とは、
=「チリのスペイン語は数あるスペイン語のなかで一番分かりづらい」
という意味で「最悪」なのです。
やりとり9
川上さん→
ウルグアイ人とアルゼンチン人が書いた、外国人向けチリのスペイン語の辞書。
オレの意見→
チリに近い国の同じ言語を話す人たちが辞書を書くくらいチリのスペイン語は独特。
日本人がわからないのは当然やな 笑
やりとり10
川上さん→
スペイン語圏でもほかの国から来た人はチリ人のスペイン語のわかりにくさを強調します。
オレの意見→
まあ、キューバ以外の国の人には、チリのスペイン語のわかりにくさを強調する権利があるでしょう。
キューバはわかりづらいからね、チリと並んで。
やりとり11
川上さん→
早口であること以外に、同じ言葉が使い方によってまったく別の意味を持つということが挙げられます。
たとえば、若者が口に出さない日はない言葉「Weon(ウェオン!)」。これは口癖のようにあまり意味を持たないときもあったり、「友達」「兄弟」みたいにして使うこともあれば、「馬鹿野郎」とか「最低の奴」という意味もあって、外人を混乱させます。
よく使われる「Raja」はスペイン語辞書で見ると「割れ目」。
一方、チリではお尻という意味。
しかし、「La Raja」は「ファンタスティック」という意味になります。
たとえば「昨日の飲み会どうだった?」と聞かれて「la raja」と答えれば「最高だったよ」という意味。
ですが、「estoy raja」になると、とても疲れているということになるのです。
同じ単語でも、文脈や相手、表現によって意味は全然違う...
オレの意見→
上で取り上げた、チリのスペイン語が分かりづらい理由の具体的な説明ですね。発音を省略するだけじゃなくて、「単純に早口」というのも確かにある!
やりとり12
川上さん→
そんな表現を随所に使って盛り上がるチリ人の友達たち。
一方、考えながら話を聞いている私は、確認もできず疲れてしまいます。
オレの意見→
これ、外国語を現地で学んだことがある人なら、ほぼ全員が体験したことがあるはず。さすがに飲み会やと、いちいち「今のどういう意味?」とか質問できんしね。
ある時期でこういうネイティブのガチ会話に食いつくのはやめました。
それで話振られたら、「ごめん、なんの話かわからんくなったわ」って言います。
それでみんながこっちに合わせてトーンダウンしなくていいように、「そのまま続けて」と付け加えるようにしてます。
やりとり13
川上さん→
たまたま私以外はみんなチリ人という状況でお酒を飲む機会があったとき、愕然としました。親しいチリ人の友達の話していることが全然わからないのです...
チリのスペイン語は最悪って本当?
— study-spanish (@studyspanishjp) 2018年9月9日
→ 完全に納得。
→ 仲がいい友達で普段は言ってることが分かるのに、ネイティブ同士で本気出してしゃべり出すと何を言ってるか全く分からん。
これは、チリ人と絡んだ事がある人なら分かるはず。https://t.co/iYTsoNNV1u #EXPAT #COURRiER_JAPON
オレの意見→
上のツイッターでも言いましたが、ネイティブの友達同士がリラックスして会話し出すと、どこの国のスペイン語であろうが、非ネイティブの日本人には理解がむずかしい。
しかも、自分が知らない話だったりするともうムリでしょ。
私はあきらめます。
ネイティブがリラックスすると、
・modismo(その国独特の言い回し)の使用頻度がふえる
・早口になる
・発音がテキトーになる
・笑い声で音が消える
こんな要素が入ってくるこうなったら、もう手に負えません。
子供の頃からの訓練がないと、理解できないっすよ。
逆に、このキューバ人同士の会話を他の国のネイティブが聞き取れる?
ムリやろ、絶対。
やりとり14
川上さん→
チリ国外に出てスペイン語を話すと、一瞬で、私がチリから来たことを見破られます。私のスペイン語はチリのアクセントが強いというのです。
オレの意見→
カッコいいやん!
カッコ悪くても、自信を持って発音できれば、その発音が一番カッコいいと思う。
話し方が悪いってわかってて、確信犯で話せると印象がいい。
アルゼンチンのメンドーサの人は、自分たちの話し方がカッコ悪いと自覚してる。
それを分かってて、誇って堂々と話している、という記事を前に読みました。
指さされるのをわかっていて、確信犯であえて自分を出す。
オレは、カッコいいと思います。
やりとり15
川上さん→
メキシコに住んでいた日本人の友達はメキシコアクセントが、アルゼンチンに住んでいる日本人の友達にはアルゼンチンアクセントが、スペインのセビージャに住んでいる友達はセビージャのアクセントが...
オレの意見→
これはあるあるですね〜。
オレはメキシコ歴が一番長いけど、全く染まらない 笑
頑なにメキシコのスペイン語はダサいと染まるのを拒んでるからね。
やりとり16
川上さん→
同じスペイン語を話す日本人でも、そのスペイン語のアクセントはどこで習ったかで全然違うのが面白いなあと思います。
オレの意見→
いろんな国のアクセントを完コピできるようになりたいです。
やりとり17
川上さん→
決して格好良くないチリのスペイン語アクセントを身に着けてしまったワタクシ。
オレの意見→
そのカッコよくないスペイン語をネイティブに勘違いされるくらい完コピできたら、逆にカッコよくないすか?!
やりとり18
川上さん→
せめてチリ人の言うことが完璧にわかるようになりたいと思う今日この頃です。
オレの意見→
他の国から来たネイティブが理解できずにポカンとしてるのに、東洋人の自分が完璧に理解できて、話に乗って行けた、リードできた、うまく合いの手を入れて盛り上げられた、とかできたら、めちゃくちゃカッコよくないすか?
最後に
しかし、良い時代になりましたね。
ネットがあれば、いろんな国のスペイン語に好きなだけ触れられます。
私が大学生だった頃には、まだこんなにネットに情報がなかったです。
うらやましいですね、今の大学生を取り巻く環境が。
最後に、この記事を書いてくれた川上さんに感謝です。
オレが頼んだわけじゃないけどね。
まとめ
この記事があなたの参考になればうれしいです。
もっとスペイン語が上手になりたい。
キューバに住み込みでダンス修行がしたい。
以上、スペイン語と日本語の現役プロ通訳、タクミでした。